数年ぶりに正月を実家で過ごした。自然農にはまり込んでからなんとなしに親戚筋に顔を合わせづらく、帰郷する時も不義理を重ねて盆と正月を避けて帰ることが多くなっていた。昨年の秋に遊びに来てくれた従兄弟が緩衝材になるかなという助平心と、まがりなりにも農園を始めてチラシやWEBなどで活動が見え始めてきたことを過大評価し、覚悟を決めて大晦日の夕日に車を走らせることにした。
元日の朝、港町の岸壁の向こうに、だいだいに染まる初日を拝む。慣れ親しんだ、身を引き締める冬の浜風に、初心と決心が洗われるような気持ちになる。今年は、「発芽」の年にしよう。ぽつぽつと芽を吹かせ、根を伸ばし、育つための基を作って、大気を知る、その年。焦らず、徒長せず、枯れぬように。

色々な人の期待と想いを背負いながら、魑魅魍魎と観音菩薩の世の中を生きるしかないのだから。そう想いきって、やるしかない。