卯月二十七日 雨
雨が寒い日となりました。ブルブル。
雨上がりの晴れた日、栗の花の「薫り」がどんよりと漂うこの頃は、雑草がいよいよもっていたるところに茂り始める。「草いきれ」と呼ばれる夏の始まりの独特の重い空気であるのだが、自然農の百姓にはたまらない「気」の満ちる頃でもある。
そしてその同じ頃、同様の重力を携えた「匂い」が立ち込めるのもこの季節の特徴である。雑草退治に苦心されている方の魔法の薬、「除草剤」の匂いである。ちょっとすえたような、むっとくるような、中学校の運動部の部室のような、大自然の中ではなかなか鼻にしないような、でもそこまでは強烈でもない匂い。畑に立っている時、自転車で走る時、ふと、風にまぎれて漂ってくるその違和感はここ数年の百姓暮らしですっかり恒例のモノになりつつある。
特に数日行けなかった畑に来たときにソイツに遭遇したら要注意。まずは畑の周囲を歩いてみる必要がある。まず間違いなく近くに茶色く枯れたエリアを発見するだろう。それはたいていもちろんお隣さんの畑であるが、ごくまれに、小生の畑の作物にもかかることもある。そして、おやまあ、と驚くほどにぐっしょりと首を傾けた苗の姿に出会い、そして数日の後にその苗は枯れてしまうのである。こちらとしては残念極まりないことではあるのだが、「雑草」に対していかに自分が異世界にいるかを痛感する瞬間でもある。そうした混沌を受け入れつつお隣さんに少しずつ理解してもらいつつという方法こそが、自然農を続けていく上で大切な、ゆるい感覚でもあるのだろう。できうる限り。
そういうわけでお隣との境界線の雑草管理は、自然農実践において何にもまして最優先されるべき重要事項なのである。明日やる、と思っていたその日の留守に除草剤を散布されていても、どうにもこうにも後の祭りなのだ。「ぼうぼうだったからクスリまいちゃったよ」と言われたらそれまでの世界ですから。
雑草はやっぱり、邪魔者なんだよね。今のところ。あの匂い、漂ってるんだよなあ。ふがふが。

除草剤の威力。