念願の、念願の、雷雨がついに降りてきてくれた。
この二週間、雨らしい雨も、夕立らしい夕立も、これだという水量がないカラカラに干乾びた心体。その全てを潤す、待ちに待ち焦がれた雷雨が、とうとう漆黒の空を引き裂いてこの夜に降臨した。
ざぶざぶと大地を叩き、びりびりと暗黒を震わし、めきめきと雷光が瞬く。稲が、トマトが、ピーマンが、イモが、大豆が、そして雑草が、今か今かと喉が鳴らんばかりに地下に地上に張り巡らした吸水機能の全機構をフル稼働させて大吸引せよ!!
またひとつ、またひとつ、ごるんごるんどしんどしん、めきめきめきと、雷神様の大震動。ああまさに、今この大雨。これを、この大雨の一粒一粒をどれほど待ちわびたことか。オリンピックも誕生日も、お盆も集合日も取材もアルバイトも何もかも、くそったれで待ちわびたこの大雨量。
もっと、もっともっと、もっともっともっと。あふれておぼれて水没してしまえ、とさえ思えるほどの、この一ヶ月を振り返って噛み締める雷雨の夜。
なんでこんなに嬉しいんだろ。ああ、俺、植物になってきたのかも。せめて今日だけでも。やったぜこんちくしょうだこのやろう。