注)記事の日付は太陰暦を用いております

2009年09月04日

ああ

文月十六日 曇り

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 稲、命(い)の根(ね)の花が、ちらり、はらり、そのうちにまもなく、ぶわり、と咲く。小生の、迷いを置き去りにして、もしくはピタリと沿うように。

 今どこにいるのか。そしてどこに向かうのか。川は流れ、その中で泳ぐのみ。周りに何があるかばかり考え、それにつかまって浮かび上がることばかりを考えて、かえって浮かばぬことに気づかされる。浮かび、泳ぐためには、衣服を脱ぎ去った己の体重と体力と精神と、そしてなにより、今どんな流れで深さであるか、あとは風と空と水にまかせる自身の在り方でしかない。

 自然農を隣に置いて暮らすことや良し。その他に自分を縛るものを削ぎ落とし、纏わり付かせず、何にもとらわれるな。畑に野菜の育たぬことは、故あって故なし。待つ身と、追い求める身と、その己の全てが畑に、ただそのうちに現われるのであり、どちらでもよく、だからこそ自然農に惹かれているのではないか。言葉に、体面に、体裁に、脅かされるのはやめよう。ただ好きで、面白くて、あきることがないのだから。

 「自分を一番自由にしてくれる束縛とは何か? それを大事に思う心を育てよう」

 小林よしのり氏が著書で述べた上の言葉とは、少々文脈は異なるのだが、今の自分が立つこの時と所に、その何かは既に手にしている。まずはそれを大事に思い、それに拠って立ち、生き、そして、それが故に、自然農を隣に置いて暮らすことの喜びを知る。

 明日は満月。そしてまた欠ける。すべては波のごとく。行きて戻りて、また元のままにあらず。自分はいかようにもなれるし、いかようにもならずともよい。そのときどきに立っている、自分を一番自由にしてくれる束縛を愛し、偽らず、あるがままに。

 成功とか、失敗とか、自分こそが、一番とらわれているのだ。何を着飾ろうとしていたのか。羨ましさも認め、妬みも認め、卑屈さも認め、弱さも認め、そして、喜びも認め、優越感も認め、満足も認め、そして今の自分を生きよう。



 ああ、時には言葉をも放り投げて。畑に溺れよう。
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2009年09月19日

再スタート

葉月一日 曇り

 短いようで長かった文月が過ぎ、今日から葉月。

 少しばかり、畑から足が遠のき、田んぼの稲は任せるままにし、遠のくことで、また想いを新たに。畑で何が起こっているか。土はいまどんな状態なのか。虫は、微生物は、生きているか。草は、今なにが生えているか。野菜は、何故育たないのか、そして何故育つのか。考えず、見る。見て、手を動かす。動かして、待つ。待って、感じる。感じれば、ひとつ、体に染み込む。それをすることを忘れて、スピードと、効率と、目の前の結果と、何か「形あるもの」に目を奪われて、そして足踏みしていた。田畑から足が遠のいてしまうほどに。

 自然農の田畑では、その足踏みの最中でも草と虫が絶えず生き巡っている。常に動的平衡を保つ生命活動と同様に、人間や山羊や、その他のあらゆる生命と同様に、動き続けている。その中での安定を、野菜の収穫を、文明生活とのバランスを、築いていこうという試みが自然農である。

 見ること。心が揺れる試行錯誤を受け入れて何事もやってみること。田畑に足を運ぶこと。感性と実践とあと少々の読書で、己を潤せ。

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 〜秋の野に 朱色を灯す 石勺柏(アスパラガス)〜

 
 なにしようかな。枯れ草堆肥も入れてみようか。ちょっとは耕す部分も試そうか。自分には何を投入しようか。家にある本全部読みたい。でも、少しずつ。でも、全部やりたい。もう一度、再スタート。こうした独り言は、時に必要なのだ。
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2009年09月23日

出さない

葉月五日 【秋分】 晴れ時々曇り

 自然農の毎日には、とり立てて連休の恩恵は余りないのだが、穏やかで、朝夕の冷えがぐんと増してきた秋分が静かに経過していった。気づけば、カブや大根の種を播き、ラッキョウやタマネギの球根を植え、繁茂したセイタカを抜き倒し、自ビールを仕込み、パンを焼き、散歩し、自転車に乗り、ヤギを連れまわす。もちろん、少々の酒にも溺れる。そして話す。

 誇れる友人達が様々に人生を飛翔していよいよ面白くという昨今、小生はしこしこと自然農に傾倒だか埋没だか謳歌だかを勤しんでいる。さてこれまで何をしてきたか、さてこれから何をしていくか、今の畑に立って足元を見渡すがごとき、まるで濃霧の道中にある。しかし灯台の光はいよいよ明るく、自然農とのランデブー飛行、はたまた心中飛行は確固として揺るぐものがない。幸か不幸か。

 濃霧に霞む灯台を頼りに続けるランデブー。ここにきてパイロットの気持ちが少々変わり始めている。元来、「自然農」の持つ世界観、哲学に惚れて実践に突入し、小生は事あるごとに「何か」を「どこかへ」広めようと無意識に行動していた。それがBlogであり農園でありワークショップであり、様々の活動として今につながっている。自然農からインプットがあればあっただけ、アウトプットをより効果的にしたいと思っていた。そしていつしか自分は、出すべきアウトプットが枯れてもなお、うんとこすんとこ出そうと、いや出せると、アクセルを吹かしていたのかもしれない。さて今、搾っても出ない小生がすべきこと、それは。

 出さない。 

 インプットは日々重なり、畑に、田んぼに、足を向けるたび、離れるたび、積もり積もる。その蓄積を、溶かさずに、もしくは溶かしながら、ただそのままに、積み重ねてみる。今まで、無秩序に、無反省に、なんとなしに、出しすぎていた。満ちるまで、種がはじけて落ちるまで、出さない。何をもって出さないのか、それは、我のみぞ知るのだが、その「何をもって」というのが、一番厄介ではあるんだけども。


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小豆は一足先に膨らみ始めてきたね。


【秋分】…陰陽の中分となれば也(暦便覧)
     ★雑草屋的季節分布★ 夏:秋=4.9:5.1

     秋の彼岸の中日で、国民の祝日の一つ「秋分の日」。
     この日は春分と同じく、昼と夜の長さがほぼ等しい。
     しかし、秋分の日と春分の日の気温を比較してみると、
     平均気温で秋分の方が10度以上も高くなっている。
     夏の暑さの名残があるからである。
     雷が鳴らなくなり、虫は地中に隠れ、水が涸れ始める。
     また、台風のシーズンでもある
     ※読み:シュウブン
     <参考:【室礼】和のこよみ & こよみのページ
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2009年09月24日

カエル

葉月六日 晴れ時々曇り

 秋の虫の音の洪水も一通り聞き飽きてようやく秋もこれからというこの頃、栄華を誇った夏の勇者と畑の物置小屋にて再会した。まだいたのかという当たり前の驚きと、またしばらくは会えなくなるなあという少しばかりの郷愁を携えて。


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なるほど「初心にカエル」ってね。そんな駄洒落はいらんってか。
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2009年09月29日

スタンバイ

葉月十一日 曇り時々雨

 ここ数日、畑の土を鍬でけずると土埃が舞うカラカラの秋晴れが続いた。秋播きの種の発芽を促したくて、播種後にジョウロで水をかけながらの作業にちょっと飽きはじめてきていたころに今日のこのぱらりとした雨。時候やよし。
 作業をしていると、この秋の作付けを喜ぶ気持ちと、来年の春を見越して土の状態を良くしたくて作付けを控えたい気持ちがぶつかる。すでに決めたはずの作付計画を毎日のように畑で練り直しながら一列一列種を播いてゆく。その行ったり来たりの迷い箸ならぬ迷い鍬も楽しい。


 さてさて、5月に種まきした枝豆(大豆)がようやくモリモリと膨らませ始めた。今日は旧暦十一日。いよいよ豆名月が近づいてきた。
 10月のつくいちが異例の第2日曜日開催のため、このモリモリの豆がお届けできる機会が一週間伸びてしまうことになるのが残念だが、つくいちにもまだまだ豆は出せる見込み。さりとて今週も来週も、いつでも食べ頃の枝豆が畑にスタンバイしているのだ。


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 茹でてそのままの枝豆もよし。つぶして「ずんだ」にしても風味最高。真夏のビアガーデンでの枝豆は、軍配を挙げるなら明らかに主役はビール。しかし部屋着が半そでから軽い薄手の長シャツに変わるこの時期に、冷たすぎないビールを片手に豆本来の旬を味わう。その時、主役はビールではなく自然農の枝豆に座を明け渡す。

 葉物、果菜類が上手く育てられなかった今年の思いが重なって、ずしりと太った鞘を眺めると、ついつい感想が大げさになるのはご愛敬。なんとか頑張って育ってくださいましたから。


 相棒のyamaさんと小生が育てた個性ある枝豆は、雑草屋本舗にて注文受けたまわり中。

posted by 学 at 22:47| Comment(3) | TrackBack(0) | 地に足つけて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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