注)記事の日付は太陰暦を用いております

2010年03月12日

セットアップ

睦月廿七日 晴れ


100312potate.jpg



 ジャガイモの種芋を包丁でカットし、一日から二日ほど陽に当て切り口を乾かす。頃合い良く切り口が乾けば、もういつでも植え時である。カットしてすぐ植えたい場合は、火鉢で燃やした草木灰を、消毒のために切り口につけて植えればよい。
 
 自然農を始めてから、幾つめかの啓蟄(今年は3月6日から)の春。虫に負けじとムズムズしだすのは、やはりこのジャガイモの植え付けをスタートしてからであろう。前年までに幾度も経験していても、種芋は何グラムに切るのだったかを忘れ、植え付けは何センチ間隔だったかを忘れ、植える前日の直前の直前まで畑の作付場所を思案し、ようやく、切り口が乾いて萎みかけた種芋の最初の一個を土に埋める。一個植え、二個植え、十個植えたあたりで、埋め方はこれで良かっただろうかと悩み、十一個めから少し植え方を変えたりもし、二十個あたりからは土との相性もようやく合いだし、スピードは増し、迷いが減り、イモは着実に自然農の畑へ忍び込む。

 ジャガイモは無機質な物質ではなく、どこかで(そのほとんどが道産子たちであるが)たしかに育てられた、その結果の継承である。昨年のその命の成果が、冬を越えて今こうしてついに次のスタートラインに立つ。たまたまの縁で我が家に届き、何の因果か、微生物あふるる、雑草あふるる、自然農の畑に植えられたのだ。また、種芋の外側も決して無機質な土ではない。ジャガイモはただの土の中で養分を吸って成長するというのではなく、土に埋めいれた瞬間にその先住者(微生物、雑草、虫)たちが雑多に棲みかう長屋へ新参者として招かれ、ともに生き、育ち、ジャガイモとして全うしようと共同生活(競争生活かもね)を始めるのだ。今日の昼に植えた百個のイモは、それぞれにその植え箇所の住民たちと顔をあわせ、順応し、この夜を迎えているのだ。・・・と半ばメルヘン、半ば本気にそう思っている。
 
 
 ジャガイモの植え付けが始まれば、休むひまなく、春野菜夏野菜の種播きが一斉に時期を迎え始める。文字通り、今年の農作業の、狼煙が上がる。ここ数日、新しき夜を迎えているのはジャガイモ達だけではない。否が応にも新しきシーズンを迎え、気持ちも、体も、脳内も、全てセットアップして、ジャガイモに負けずに新しい環境、季節へ順応していく。我も。
posted by 学 at 23:07| Comment(2) | TrackBack(0) | 畑の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月21日

大盛り

如月六日 【春分】 雨のち晴れ時々曇り

 所用で、筑波山の反対側、笠間の山の中へ。朝方の雨だか風だかよくわからない曇天が、気がつけば青空と曇り空の下に漂う、黄白けたチョークの粉が舞うような景色。シナ大陸からの黄砂(黄塵と言ってもよいでしょう)なのか、杉の花粉なのかはあえて問いませんが、どうやら今日一日は大盛りのスギ花粉を摂取できたようです。不幸中の幸いにて、杉ではなく檜の木立に囲まれた半屋内での一日ではありましたが、午後遅くには、頭も朦朧としてきてちょっとしたダウン系でも吸いましたよ状態(あくまでも想像です)。普段から吹きさらしの畑で作業している体ではあるものの、どうやら山の中の花粉量は我が身にはオーバーフローのようでございました。

 考えてみれば、黄砂(中身の半分は化学物質のような気が濃厚にしますが)もスギ花粉も、人災といって差し支えないようなもの。詳述はあえてしませんが、砂漠化、植林、公害、無政策、などの諸因が汚泥のように混ざり合って、本来の天災(というか自然現象)が人災へと突然変異して文字通り降り掛かってきているのですな。人類のくそったれ。

 意地でも投薬してないんだけども、諸作業が滞るとなると考え物だわねえ。カテキン山盛り仕様の濃厚緑茶をがぶ飲みして効果ある気分を盛り上げたり、オーガニック無添加タバコ呑んで血流少し控えめにしてみたり、マスクの下にクロレッツ頬張って口の中いっぱいミント漂わせたり、浅はかなナチュラル抵抗にも限度があるもの事実。いやね、生真面目に頑張れば、無数の健康法だの対処法だの耳タコに存じ上げておりますが、そういうのでなくて、耐えられなさそうで耐えられてしまうマゾヒスティックな体調不良を、「頑張って」克服するのもなんだかなのよね。その結果こうやって愚痴と鼻水を無制限に垂れ流しているんだけど。

 金欠とご好意の諸事情によって畑からちょっと離れ、大風と黄色い迷惑物質に一切の情緒を奪われた、今年の春分。あと一ヶ月ほど、「か」と「ふ」と「ん」がつく奴らとの馴れ合いは続きます。

 …ここまで自覚的な駄文もそうそうない。朦朧として、寝ます。


【春分】…日天の中を行て昼夜等分の時也(暦便覧)
     ★雑草屋的季節分布★ 冬:春=4.9:5.1

     この日をはさんで前後七日間が彼岸。
     花冷えや寒の戻りがあるので暖かいと言っても油断は禁物。
     昼夜の長さがほぼ同じ頃であり、この後は昼の時間が長くなって行く。
     ※読み:シュンブン
     <参考:こよみのページ & 【室礼】和のこよみ>  




足元だけは、heavenly spring.
posted by 学 at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 徒然なる日々 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月30日

オミゴト

如月十五日 晴れ

 真冬の寒さがここ数日のさばっており、手が悴んで作業が進まない。朝のバケツには氷が張り、日陰の畑には霜柱がそそり立つ。日がさせば陽気は間違いないが、少しでも雲の下に入れば驚くほどの寒気が肌をさす。これは参りますね。

 4月に入れば冬の残りも溶けきることを期待しているが、春本番のフルシーズンを前に迎えて、先日の週末には農園で臨時集合日を設けて田んぼの畦道修復を行った。詳細は後日農園Blogでお届けしたいが、出席者皆の素晴らしい腕力脚力ど根性で、玉取の田んぼ三年目にして見事な畦道が完成した。昨年の崩れかけた畦道をベースに、開墾箇所の土を掘り上げ、運び、スコップと鍬で形を整え、丁寧かつ効率的に40mほどの大工事。出来上がりの威容に、城壁もかくのごとしと声も上がる。オミゴトです。

100327aze.jpg



 一人ではよもややる気も起こらぬ土木作業も、十人集まれば半日の出来事。当たり前のように毎年、農園の方達と共同作業として進めていることが実はとても有り難いことであり、そして奇特なことにプレーヤーの方にも楽しんでいただけていることが、本当に嬉しい限り。これから種籾の播種が始まれば振り返る暇もなくなる田んぼの、こうした準備仕事を、束の間の冬のぶり返しの中で感謝する。今年もまた、良い田んぼでありますように。お天道様も竜神様も、程よく恵みをくださいますように。どうかどうか。
posted by 学 at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 田の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。