
月の満ち欠けにあわせて農を営む。という今年度の試みは、三割成功、七割未達、といったところだろうか。
一ヶ月の半分の、新月から満月へ月が満ちていく時期、もう半分の欠けていく時期、大まかに言えばその区分で、植物の生育へ異なる影響がある。そのことを耳にしてからおよそ十年、ようやく自然農の営みの中にそのサイクルを取り入れていこうと決め、無理やりながらつくし農園のプレーヤーさんにもお付き合いいただく形で、今年度の集合日を月2回に増やしてみた。
結果としては、まだ「わからない」。その理由を自分なりに清算してみるならば、月の満ち欠けが成育に影響を及ぼす割合が、今の自然農の畑の成熟度や成長曲線に比べて、低いからではないだろうか。現段階の農園の様子を大雑把に表現すると、区画や畝一つ一つによって、成育の様子ががらりと異なる。整い始めてきた区画では、彩り豊かに収穫が見込まれてきた一方で、まだまだ雑草の勢いに負けていたり微生物の活動が活発でなかったりなど野菜を上手に育てられない場所も多い。その、母なる土壌の成熟度による育ち具合の変化率は大変顕著であり、育つ育たないは、やはりその度合いに大きく頼らざるを得ないようなのだ。月の満ち欠けに手をかけ始めたばかりで明言はできないが、月の及ぼす影響は、土壌の成熟の上にたって初めて、差を感じられるのではないだろうか。
であるなら、「わからない」というのは、正確ではない。自分の耳に、まだ「聴こえてこない」という方が正しそうだ。月の引力による、生命への影響はきっとある。動物としての自分のバイオリズムなども含めて、もちろん植物にも影響している。しかし、その繊細かつ巧妙な仕掛けに応じられる自分の準備が、まだ整っていないのだ。
身体術やヨガ、瞑想を深めていくと、始めた頃には気づかない、微細な身体の差異や変調に気付くことが増えてくる。自分の中には最初から存在していた「身体の声」に、最初は気付くことができなくても、時間をかけて耳を澄ましていくなかで、少しずつ聴こえる感覚が育ってくる。
自分には、自然農の畑に絶えず降り注いでいる「月の声」を聞き分ける耳が、まだ育っていないのだ。しかしそれは、耳を澄まし、心を傾け続けることで、きっと聴こえ始める時が来るのだと思う。差異が「わからない」のではなく、まだ「聴こえてこない」だけなのだから。

頬の膨らみとカブ、どちらも美味そう(笑)。
というわけで、今年度、月二回開催していたつくし農園の集合日を、来期(2月スタート)からまた月一回に戻すことにする。月との語らいをやめるわけではない。聴こえていないことを聴こえているように振舞うのが何よりイヤだし、その楽しみは、もう少し後にとっておきたいと思うのだ。自分だけ、家族だけで、ああでもないこうでもないと楽しんだ先に陰陽と自然農の上手な付き合いが見つかるならば、その時まで待つことにしよう。
そういえば明日は満月。満月から新月にかけては、土中の芋類などの収穫、保存にふさわしい時期とされている。明日以降、アピオスや菊芋の収穫を再開しよう。新年ぼけして田畑からついつい足を遠ざけ気味な毎日に、満ち欠けを理由に背中を押してもらおう。そう、今年度の三割成功とは、月の動きを意識することで、サボりがちの季節ごとの農作業に発破をかけてもらえたことなのだから。
そんなこんなで、2017年度。つくし農園のプレーヤー募集がスタートしました。
耕さず、農薬肥料を持ち込まず、虫や草を敵とせず、月の声に耳を澄まし、自然の営みに応じた農のあり方。小松学流の、自然農。今年もそろそろ芽吹き始めます。

元旦に浮かぶ四日月。これからたった十日ほどで、月は満ちる。