注)記事の日付は太陰暦を用いております

2008年07月20日

お手紙します

水無月十八日 晴れ

秋野先生へ


 先生、昨日はお久しぶりでした。みんな先生に会えて、最高に喜んでましたよ。いやはや楽しかったですね。

 実は僕は友人の作曲するという曲を少々みくびっていました。僕と話すときのあいつはいつも馬鹿な事ばかり言ってて、人前で話すときもなんとなく気取ってて、ミュージシャンの顔よりも馬鹿友達の一人としか思ってないからでしょうかね。このコンサートも、先生にはお見通しでしょうが口ばっかりで実際は何も手伝ってはなかったんです。ただ昨日ぐらいは、と思って朝から駆けつけてみたら、幸運にも舞台袖で手伝う雑務をすることになってました。この手伝いがまた、嘘のように面白いんですよ。プロの顔で演奏に入る瞬間の演奏家たちの背筋の入り具合や、コンサート全体を、鼻歌を歌うようにかつどこにも妥協せずに見事に下準備してコントロールしてゆくステージマネージャーさんの職人技など、ただの手伝いなのに、グッとくる人たちの横顔に接することができた僕は、本当に幸運でした。
 コンサート、もちろん裏方の諸先輩後輩の逞しさにも驚きましたが、馬鹿友達の作り上げた曲に、僕は本当に涙しました。まるで先生が、「人間の底力を見くびってはいけない。そしてどんな風に生きても、ここぞの時にたまげるような底力を発揮すればそれでいいんだ」と言っているように思えました。あいつは僕に底力を見せつけてくれました。

 先生、コンサートの後の国際総合(旧:国際関係)学類の大同窓会で、僕が意外に思い、そしてなぜだか嬉しかったことがあります。それは、あまり先生の話をしている人がいなかったことでした。まるで先生が同窓会にいるみたいに、皆普通にただ同窓会を楽しんでいました。もちろん僕も。そして時折、それは十数年前にも先生の噂話をしていた時と同じように、時々先生の話をしている、そんな同窓会でした。秋野魂のエネルギーが煮えたぎってましたね、なんだか。

 二次会三次会では、大先輩方や現役の学生たちに、ついつい自然農を暑苦しく話してしまいました。自分が雪を踏みしめているかのように、または自分が虎であるかのように話してしまっていたような気がして、なんとも恥ずかしい気分です。先生はそれでも、「ふんふん」と頷いて聞いてくれた後に、「○○○○○○。」と想像もつかない手品ような秋野語を浴びせてくれるのでしょうか。それとも「そりゃあいいね、もっと面白くやってみて、俺を唸らせてください。」と言ってくれるでしょうか。
 学生の頃は全くといっていいほど、自分の話などできませんでした。和食の定食やさんに連れてってもらった時も、先生の家で中央アジア料理をゼミ生で食べたときも、理解度50%程度の脳みそで、先生の魔法のようなリズミカルでダイナミックな雑談講座を脳みそに流し込んでいるばかりでした。今ならこんなに話してみたいことあったのになあ。残念ですよ。

 明け方まで飲んで、昼に起きて農園のタッグメンバーと昼食を取った後、バイクを少し走らせてみました。1000ccのBMWを乗り回していた先生に比べて僕のバイクは90ccです。排気量が十分の一以下なのは、まるで先生と僕の排気量の違いのようにも思えて、夏風を受けながら笑ってしまいました。


 とりとめもなく書いてしまいましたが、また話を聞いてください。今日は先生の研究室に話を聞いてほしい教え子たちが列をなしているでしょうから。

 先輩の一人が、昨日配布された先生への手紙という文集の中で先生のこんな言葉を紹介していました。「大学には、口笛を吹きながら入ってきた奴しか、使い物にならないんだよ。」と。先生の真意はともかく、僕も明日から、口笛か鼻歌を鳴らしながら毎日の自然農を歩いてみようと思います。
 そしたら突然先生が畑に1000ccでやってきた時に、「おお学、楽しそうにやってるねえ。その野菜はうまそうですね。」と言ってくれそうな気がしますから。その時はまた、その時に足掻きつつ企んでいる計画を、「ふんふん」と相手してやってください。ホント、いつでも待ってますんで。

 7月20日、いつもはサラリと過ごしていた先生の命日ですが、今年はなんだか賑やかな感じがしましたよ。これもまた、なかなかいいもんですね。

 それではまた。

posted by 学 at 21:27| Comment(3) | TrackBack(0) | 地に足つけて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
当日、やっぱり来てたのか。
姿が見えないから、本業が忙しい時期なのかな…と思ってしまった。会えなくて残念でした。
教え子紹介のスライドショーで、凛々しい農家姿に感服しました。やっていることに誇りを持っている人のオーラが出てたね。

秋野先生には必須科目しかお世話になってなかったんだけど、このブログ読んだら、秋野先生の話をたくさん聞けなかった悔しさがこみ上げてきたよ。
Posted by タマコ at 2008年07月21日 13:52
会場で会えなくて残念だったね。あれはあとでCDなんか作ったりするんでしょうかね?私もコンサートにたまにいくけれど、ああいう情熱のこもった音楽ってなかなか聴けないよ。
でも秋野先生は亡くなられても、色々な形で彼の想いや姿勢が引き継がれているわけだから、秋野魂はまだまだ生きてるって感じだよね。それを大切に守って、育てて、さらに広めていくのが我々に出来ることかな・・
Posted by 頼子 at 2008年07月22日 14:16
>タマ、頼子

 当日、舞台袖にいたのでお会いできずに残念。ただしチラチラ客席を覗いていたので、二人が来てるのは気づいてたよ(笑)。 なかなか会えない機会だし、惜しかったですな♪

 また日常を生きるわけですが、秋野魂に、それぞれの我々の生き様を乗せて、グッとくる世の中にしていきましょうぜい。
 タマも書いてたけど、俺自身ももっと先生の話を聞きたかったです。それでも、あの文集でまたさらに先生の輪郭がゴツゴツと思い出されてきて嬉しかったです。CDは鋭意作成中だそうです。楽しみに待とう♪

 
Posted by インチキ at 2008年07月23日 00:29
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