注)記事の日付は太陰暦を用いております

2006年05月29日

生と死

皐月三日 曇り時々晴れ

 朝寝坊したためにパンひとつだけ頬ばって畑にでて、やることだらけで飯も食わずに八時間。気が付いたら日が傾いていた。頭で何かを考えたくなく、ざくっと晩飯を作って発泡酒3缶で流し込んで宵を過ごした。寝る前にPCを開けて、なんとなく大学時代の友人から刺激をもらったせいで、今日の出来事はやはり今日のうちにBlogに書いておこうと思い直してキーを叩いている。


 曇り空だというのに、頭上に上る太陽の光の強さは雲を透かしてありありと感じる。夏が近づいている証拠だ。作業は山ほどあるのに昨晩の一人酒で寝過ごした午前中を取り戻さねばと、手押し一輪車を押しながら気合を入れて畑に出る。ちょっと不思議で長い一日の始まりだった。


 視界に畑が広がると気にするのは、スズメやキジが畑で何か悪さをしていないかどうかというのが最近の日課である。畑にこさえた厳重にネットを被せた苗代といい、発芽しては芽を啄ばまれる豆の姿といい、鳥害はここでは笑い話ではなくなりつつある。と、目の前に飛び込んできたのは、畑の真ん中から飛び去った数羽のスズメと、まさしく先週肝いりで作成した苗代の、なんとネットの中に入り込んでいるスズメであった。農具を道に寄せてネットに駆け寄ると、慌てたスズメは入り込んだ出口を忘れて苗代とネットの間の空間を右往左往して飛び散らかしている。冷静さと、憎しみと、滑稽さの狭間で、小生がするべきことはスズメを逃がすことではなく、捕まえることだった。そう、こいつは見せしめにしなければならないからだ。長く感じたがおそらく数十秒ほどの追いかけっこだったろう。必死に出口を探すスズメが内側に織り込んでいたネットの裾に絡まって動きが鈍くなった瞬間、野生が反応して苗代をひと跨ぎし、ネット越しの左手の中にスズメを生け捕っていた。どうする?と一瞬悩み、心を決めてスズメの首を抑える。それからすぐ、小さき命は動きをやめていた。
 残酷ではあるのだが、今日から畑の苗代の上には、小さき者が紐で吊られて次の犠牲者が出ないように守ってくれている。自然と向き合うことは、こういうことでもある。
 
 
 心を切り替え、整地せずに雑草の生い茂るままにしていたエリアを、サツマイモの苗を植えるために刈り進めることにした。3月から放置したせいでフキや笹竹が込み入り、鎌を運ぶのもひと苦労していた矢先、目の前の草地が音を立てて動いた。動いた先の草間の奥に見える茶色と黒の少し光沢がかった色を見て、蛇か?と驚いたが、後ずさりして鍬を手に取り草の奥を刺激すると、それはどっしりと程よく太った、雌のキジであった。ひと安心して手元に目を戻すと、5、6個ほどの卵を宿した見事な巣が草葉に隠れていた。どうやら彼女は母鳥だったらしい。なんとも鳥達に縁のある日となったと思いながら、またも悩んだ。イモの植え場所には重なっておらず、支障はない。しかしこのまま放っておいては畑の鳥害は増えるかもしれない。とはいえ鈍く光ってこちらを見つめる野生の卵に罪はなく、移動させることで母鳥は巣を見捨ててしまうかもしれない。ましてや母鳥はここに戻ってくるのだろうか。全てがわからぬまま出した答えは、放って置くことしかなかった。かくして、イモの畝から十数センチ、不自然に刈り残した雑草の中、不思議な共存がスタートすることになった。

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 イモ植えを終え、離れた場所で作業をしだすと、どこからか母鳥は戻ってきたらしい。今度は奇襲はうけないわよ、と度胸を据えて、近づいてみても卵の上からは決して動こうとはしない。人間以外の外敵からは、実は丸見えになってしまった不運に負けることなく、この母鳥はきっと雛が孵るまでその場所を動かないつもりなのかもしれない。

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 最初の襲撃で空になった巣から、ちゃっかり持ち帰っていた卵ひとつ。なぜか畏怖して先ほどまで口にすることができなかった。覚悟を決め、何かに祈り、心して口に入れた。とびきりの命の濃さが体の芯に溶けていった。普段感じたことがないほど、命を食して生きている熱さが胃袋に広がっている。明日も朝早いのに、なんだか体が火照って眠れそうにない。
posted by 学 at 23:59| Comment(3) | TrackBack(0) | 徒然なる日々 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おれんじネットなら、そらあ、スズメちゃんに、喰われるよなあ。
やっぱ、楽するのならねえ、細かいネットがいいんじゃない。来年も、使えるし。
それでね、もう、使ってしまったし、そのまま、おれんじネット使いたいのならね、苗床周り下15cmを、布かゴミ袋切ったもので、ぐるりと覆うんです。スソに土を置いて、留めて、ね。下から入らないように。それで、ぐるりを、ざざっと、ガムテープなんかで、留めてね。横から入らないように。さらに、それで、その上から、オレンジネットをね、3cmから5cmのわずかなスキマをあけてね、2重にするんです。上から入らないように。ちょっと、だらりと、おおうほうが、いいね。ピンとするよりね。
ところで、カラスの知能なら、仲間が吊られてたら、よけるけども、すずめちゃんは、どうかなあ。結果が、知りたいですけども。なんか、ダメなんじゃないだろうか、と、わたしは、おもうのだが。
それで、キジさんのたまごは、ナマはいけませんよ。アブナイとおもうな。野生動物の生肉全般に言えることだが。
ちなみに、スズメはともかく、キジさんは、保護鳥でないだろうかねえ。まあ、うまそうですが。
しかし、これでは、秋は、たいへんそうだなあ。ひとごとではありませんが。

まあ、うちの畑にも、キジさんはね、お豆を喰いに来ます。だからね、お豆はね、草の中に、隠して植えないと、ね。今年も、ぽっぽちゃんは、ガシガシ発芽大豆食べに来てるし。うち、トウモロコシなんかは、発芽するまでは、ネットかけてますよ。それでも、山の中の畑の獣害にくらべると、まだまだずいぶん、カワイイもんですわ。
Posted by ほほほですわ at 2006年05月30日 23:37
畑の苗代では、目の細かいミドリネットで奮闘中でございます。ちょっとした、ネットと土の隙間から目ざとくスズメは入り込んだ模様ですね。なんとなく、隙を作ってスズメに入らせてしまったことがこちらの不手際のようで残念です。もっとしっかり、それこそほほほさん位念を入れてやりたいものの、根が不精ですので、そこそこになる次第です。
とはいえ、田んぼも畑も苗代の発芽と成長はまずまずの今日この頃。奮闘が、杞憂なのか、成果なのかはともかく、あれもこれも考えすぎるよりはこの程度で十分なんだな、といった感じであります。

京都の山奥にいたころの、獣害はそりゃあもうひどいもんでした。あそこは鹿と猪でしたが。こういった感覚は、実際始めて、やられて、そして身にしみるもんなので、それもまたありがたく訓示させてもらってます。で、獣害と向き合っている農民は何を食べても文句は言われることはない(笑)と確信していますので(もちろん常識が必要だけど)、キジの卵はありがたく腹に収めました。まだ体調は大丈夫のよう。丸ヶ崎の鴨ちゃんも、美味しそうですよね(笑)。
Posted by インチキ at 2006年06月01日 20:29
釣ったばかりの魚を食うのとは違うかも知れんな。ちょっと羨ましいぞ。
Posted by よしはる at 2006年06月01日 23:56
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