注)記事の日付は太陰暦を用いております

2011年04月27日

つくばの放射線について

弥生廿五日 晴れ時々曇り (強風)

 先日一通のメールを、A様(仮名)からいただいた。 雑草屋として、とても大切なご質問をいただけたので、回答と共にBlogに掲載させていただくことにした。


> HPを拝見させていただき、メールさしあげました。
> (中略)
> それと、放射性物質について教えてください。
> つくばは、原発事故から0.4μSv/hから0.1μSv/hの間で放射能物質が飛んできました。
> 今までの積算が140μSvくらいなので、大地にも降り注いでいると
> 思います。野菜に降り注いだヨウソはあまり気になりませんが、大地に降り注いだ
> セシウムが気になります。つくばはそれほど、多くないのでたくさんは降り注いで
> いませんが、そちらでは、大地の除染等はなさっていらっしゃいますか?
> はじめての放射能のこと、あまりよくわからないのですが、よかったら、
> 放射能が大地および野菜に与える影響について(つくばで)教えてください。
> (後略)


以下、回答した内容をQ&Aとして掲載する。

---転用----------------

質問1: 放射能が大地および野菜に与える影響について(つくばで)教えてください。

回答1:つくば市では、おっしゃるように大気中放射線の観測積算値が140μSv程度になっているかもしれませんが、この値は外部被曝としての積算値になりますので、地上に(=土壌に)積算値の放射性物質があるわけではありません。先日知人のカウンターで筑波大学敷地内の芝生地の表面(地上数cm)の放射線量を測りましたら、0.2μSv/h程度でした。これは地上に降下したセシウムなどの放射線によるものと思われます。(ヨウ素は半減期を過ぎてだいぶ低減しているはずです。)よって、現在つくば市の農地で観測できる放射線量は同様に0.2μSv/h程度と考えてよいかと思います。つまり140μSv程度と言われるような放射性物質は存在しておりません。

ここからは私見ですが、現在土壌に沈降して放射線を出しているのは、上にも述べたようにおそらくセシウム137でしょうが、現在の0.2μSv/hから自然放射線としての約0.09μSv/hを差し引いた、約0.1μSv/hが今回の原発事故による放射線と考えられます。この値は野菜などの摂取基準で考えますと、仮に全量が野菜に付着していたとしても僅かに10Bq(ベクレル)/kgを観測される程度の量であり、セシウム137の野菜摂取基準500Bq/kgの50分の1という数値です。また現在は福島原発からの降下性のある放射性物質の大気への放出は確認されておりませんので、このところの風雨によって野菜類に直接付着している放射性物質は地面に洗い落とされているはずです。一方土壌から野菜が吸収する可能性もありますが、植物がセシウム137を吸収する仕組みは、カリウムと間違えて吸収してしまうものであり、植物がカリウムを必要とする量以上には吸収されません。例えばホウレンソウが体内に含むカリウムは約0.7%ですが、仮にホウレンソウの全てのカリウムがセシウム137に置き換わっていたとしても(実際には絶対に起こりえませんが)、葉物野菜などの体内に入るセシウム137は=僅か0.1Bq/kgにも至りません。この値がどの程度の影響があるかと考えてみますと、自然に存在する放射性物質で人間の体内に常に存在する放射性物質カリウム40は、体内で毎秒およそ4000Bqの放射線を放出しています。このことからも、つくばでの現在の土壌から育つ野菜に対する放射線への心配をする必要はほとんどないと考えております。

質問2: そちらでは、大地の除染等はなさっていらっしゃいますか?

回答2:以上の理由から、つくばでの土壌の除染の必要性はまったく考えておりません。自然農でもっとも重要なことは田畑の生物多様性であり、今まで積み重ねてきた微生物の営みを侵してまで放射能をおそれるほどの放射性物質の降下は発生していないと判断しております。

---転用ここまで----------------

以上、文系の小生が不勉強ながらもたどり着いている今の理解です。間違いがありましたらご指摘ください。


参考URL:茨城県内農産物・畜産物への影響について


★上記、一部内容についてコメント欄でご指摘をいただきましたので、下記の「コメントへのご返答」の中で訂正、返答させていただきました。ご参照ください。

20110413endou.jpg



コメントへのご返答

kamome様 Mori様 
大変貴重なコメントいただきまして本当にありがとうございます。ご指摘、ご意見をもとに、ご返答させていただきます。


>(放射性物質の大気放出について)
>初期と比べると大幅に減ってはいますが、まだ出続けているのではないでしょうか。

kamome様のご指摘どおり、福島原発からの放出については、冷却水の蒸発などに含まれる微量の揮発性物質の大気拡散によるものなど、厳密に言えば継続の可能性があるかもしれません。私が申し上げたかった点(2点あります)は、3月半ば以降、極度に警戒すべきような大気放出は確認できないという点と、少なくともつくば地区において、福島原発からの大気放出によるものと思われる放射性物質の降下はほとんど確認できないという意味合いにおいてでした。誤解を招くような記載をしてしまいまして申し訳ございません。

参考:福島県内各市町村 環境放射能測定結果(暫定値:第54報)
  

>(10Bq/kgのセシウム137が植物体内にどれくらい取り込まれるかの可能性に関して)
>ここは、明らかな過小評価だと思います。計算方法を教えて頂けますか?

こちらは、私の文系脳の限界によるミスをしてしまいました。大変申し訳ありません。根拠ですが、10Bq/kgのセシウム137の放射能がホウレンソウ1kgの0.7%に取り込まれたら、0.07Bqになるのでは?と思ってしまいました。実際はBqとは量の単位ではないので、こういった計算は成り立たないですね。お恥ずかしい限りです。 

mori様からのご指摘を参考に、改めて10Bq/kgのセシウム137が重量でいかほどになるか算出してみます。kamome様とmori様の数値をお借りしまして、3800μCi/kg=約44μg/kg=140MBq/kgということがわかりましたので、概算として約1MBq/kg=0.31μgという値が計算できます。ここから単位を修正していけば、10Bq/kgあたりのセシウムの重量がおおよそ見当できるはずです。つまり、1MBq/kg=0.31μg ⇒ 1KBq/kg=0.31ナノg ⇒1Bq/kg=0.31ピコg ということになり、10Bq/kg=3.1ピコg であろうと推測されます。 

また、ホウレンソウがいかほど吸収するかを仮に想定するとして、Bq/kgをBq/uに計算しておきますと、調べた結果、約1Bq/kg=50Bq/uとわかりました。1uですと、自然農の畝での収量は欲張って20束ほど、見栄を張って1kg収穫できるとしましょう。これによりようやくkamome様のご指摘にお答えいたしますと、畑の土壌に現存すると推察される約10Bq/kg(10Bq/kg=500Bq/u つまり 500Bq/u=155ピコg)のセシウム137を、仮にホウレンソウ1kgが全てを吸収しますと(なかなか全てはいかないでしょうが)、155ピコg がホウレンソウ体内1kgに取り込まれるというわけです。ホウレンソウ100gでは15.5ピコgとなるわけですね。

155ピコg(ピコgはμgの100万分の1)の放射性物質が人体に悪影響を及ぼすとは私は思いませんが、ビーグル犬の実験で言えば、犬に投与した量の約28万分の1の量ということになりました。この数字をふまえた上で、kamome様のおっしゃるとおり、「受け入れるかどうかは、自分で判断するしかない」ということになるのだと思います。

記事中にもありますが、改めてmori様からの情報をまた引用させていただきますと、10Bq/kgを傾向摂取した時の実効線量は、0.13μSvとのことですので、最初から影響だけを考えたらこちらの数値の方が考えやすかったかもしれないですね。つくばでホウレンソウ100g食べたら、最大にみても0.013μSvの内部被曝の恐れがあるということでしょうか。これは毎回その値になるのではなく、10Bq/kgのセシウム137をホウレンソウが一度に吸収したと仮定しての数値なので、その後は遥かに少なくなるでしょう。現実的に考えてみますと、例えば継続してつくばで取れた野菜を毎日1kgずつ(1年くらい?)摂取したとして合計で0.13μSvの内部被曝を受ける可能性があると考えていいのかもしれません。実際は、土壌中のセシウム137を植物が全て吸収することはありませんので、この値よりも少なくなるはずです。また体内に摂取されたセシウム137は70日程度の体内半減期で計算され、1年経つ頃には35分の1となります。

※野菜の種類、収穫日、収穫地などによって放射線量は変動があります。今回の記事内の数値は、つくばで観測されている放射線量をもとに推測した、計算上の値であることをご理解ください。

参考:茨城県内農産物・畜産物への影響について



posted by 学 at 23:48| Comment(8) | TrackBack(0) | 筑波を想う | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>現在は福島原発からの降下性のある放射性物質の大気への放出は確認されておりません
初期と比べると大幅に減ってはいますが、まだ出続けているのではないでしょうか。

>全てのカリウムがセシウム137に置き換わっていたとしても
ここは、明らかな過小評価だと思います。計算方法を教えて頂けますか?

「wikipedia 放射性セシウムの危険性」より
犬を使った実験では3800μCi/kg(約44μg/kgのセシウム137)を服用したものは3週間以内に死亡した

また、放射能汚染野菜は水で洗っても放射能があまり取り除けないという研究結果もあるようです。
http://moribin.blog114.fc2.com/blog-entry-1000.html

つくばの放射能汚染は、現在の安全基準と比べると、非常に低いことは間違いないと思いますが、それでも危険があるとする研究結果もあります。受け入れるかどうかは、自分で判断するしかないでしょう。
Posted by kamome at 2011年04月28日 11:28
>「wikipedia 放射性セシウムの危険性」より
>犬を使った実験では3800μCi/kg(約44μg/kgのセシウム137)を服用したものは
>3週間以内に死亡した

3800μCi/kgは換算すると140M(Mega)Bq/kgですか。{1Ci = 37G(Giga)Bqとして}
結構なもんですね。
それをビーグル犬に静脈注射で投与するなんて、それだと死んじゃいそうですね。

セシウム-137の生体に対する影響
10k(kilo)Bqを経口摂取した時の実効線量は0.13m(milli)Svになるそうです。
@原子力資料情報室(CNIC)
Posted by Mori at 2011年04月28日 17:11
>kamome様 Mori様
コメントありがとうございます。

返答が長くなってしまいましたので、記事中に追加記事を載せることにいたしました。ご参照いただければ幸いです。

http://104.zassouya.com/article/198096425.html#more
Posted by 雑草屋 at 2011年05月01日 08:22
空間放射線量率が0.1〜0.2μSv/hの地点での土壌の放射能が10Bq/kg(小松さんの換算式:約1Bq/kg=50Bq/uで換算すると500Bq/uに相当)という評価は、特に耕起をほとんどしない自然農の農地を評価する値としては、過小評価の値のように感じます。

土壌の耕起(ほとんどセシウムが検出されない2〜5cm以下の土とも混合される)を前提とした農水省のデータでもつくば市の水田のセシウム類の放射能は154Bq/kgとなっています。
http://bit.ly/faqWHb

また千葉市での測定ですが、土壌の放射性物質の核種別の蓄積量について以下に実測のデータがあります。
http://bit.ly/fWfITs

最も影響の小さい芝生の下の土で測ったデータでも、浅いところでは半減期の長いセシウム137と134の合計で2000Bq/uを越える値が検出されています。

ちなみに、この測定を行った日本分析センターの空間線量率はつくばのKEKでの値の1.3〜1.4倍くらいの値になっています。
千葉市(日本分析センター)の線量
http://bit.ly/gUkTlR
つくば(KEK)の線量
http://bit.ly/kpxbPE
Posted by nakazato at 2011年05月03日 10:30
あと、実際問題として作物への移行量は問題にならない量であるとしても、そのような畑で農作業をする場合には、土壌表面から舞い上がる土埃を吸入することによる内部被曝の影響を決して軽視すべきではないと思います。

生物的半減期が実際の半減期に比べて短くなるというのも、体外への排出が難しい肺への沈着の場合には当てはまらないので、ここは特に注意が必要と思います。
Posted by nakazato at 2011年05月03日 10:50
nakazatoさん

コメントありがとうございます。畑でもお話しましたが、お返事遅くなりましたすみません。

ご指摘のとおり計算として実際の数値と離れたものもあり、申し訳ありません。改めてnakazatoさんからの情報を元に簡単に振り返ります。

つくば市の水田の放射能が154Bq/kgとして、玄米への移行する換算量が15.4Bq/kgと出されています。つまり、玄米1kg食べておよそ0.2μSv/hの被曝と考えられます。ホウレンソウの移行係数は0.0011とわかりましたので、仮に多めに見積もって畑が500Bq/kgとして0.55Bq/kg、1kg食べて0.007μSv/hの被曝されると考えることができそうです。これらの数値は私の判断では、心配するのがもったいない数値です。

また土壌からの吸入について、いったい土ぼこりの中にどれ程放射性セシウムが含まれるわかりませんし、自然農は不耕起なので表土に残留しやすいという声も伺います。これらは数字がはっきりせず判断できませんので、別の視点から、体内に摂取される放射性セシウムの摂取経路を考えてみます。チェルノブイリでのある研究では、放射性セシウムの経路として、「体内には94%が食べ物からであり、5%が飲み物から、約1%が呼吸による空気から取り込まれる」※(下記参照)との記載があります。体内全体の中で呼吸によるものはチェルノブイリでさえ1%という数字です。これ私自身が想像していたよりもとても低い数値で驚きますが、食べ物での摂取が上記であることも考慮すると呼吸による摂取は、肺への沈着を心配した上でも遥かに僅かと考えてもいいのかもしれません。

個々にまかされるという前提があった上で、nakazatoさんのご指摘どおり軽視すべきではないと思いますが、かといって重視するべきものでは全くない、と私は判断しています。結局、おのおのになってしまうんですよね・・・。

※和訳論文「チェルノブイリ地区の放射性物質からの開放」
http://satvik.jp/herbs/Chernobly.pdf
・・・2pの下段に記載があります。この論文は放射能の健康に対する悪影響について述べられており、その中での呼吸の割合を記しています。
Posted by 雑草屋 at 2011年06月08日 12:39
返信ありがとうございます。

土埃の件は、ちょっと補足しますと、私の区画では最近はたんじゅん農法的に
表面の土と草をかき混ぜる作業をすることが多いので、個人的に気になっていた
ということが背景にありました。
Posted by nakazato at 2011年06月09日 09:36
あと、セシウムの作物への移行係数については、既にご存知かもしれませんが、
先日、農水省から以下のような参考データが発表されています。
http://bit.ly/lMgp9D

これを見る限り、ヨウ素とは異なり、ホウレンソウなどの葉野菜よりも根菜類の方が
影響が大きく、論文によってはサツマイモで0.36などという値も報告されているよう
です。

また下記資料によるとセシウムに関しては酸性土壌ほど移行係数が大きくなる
傾向があるようです。http://bit.ly/k9UyFi

以上、一応ご参考まで。
Posted by nakazato at 2011年06月09日 09:43
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