注)記事の日付は太陰暦を用いております

2012年02月01日

土用にて

睦月十日 晴れ

 十日前に旧正月を迎え、翌日には大雪が降ったころから、手足が凍えるような冷え込みが続く。庭の雪だるまも日陰のせいもあってか、顔や手を溶かしながらも安穏としてまだまだ鎮座し続けている。いよいよ寒さは極を迎えているが、ちらほらと、庭の土に、木の枝に、新芽や花芽が顔をのぞかせ始め、ようやく春が立とうとしているのも、間違いない。

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<雪だるま@庭 1月24日>




 立春を三日後に控える冬土用のこの頃。陰陽五行では、立春、立夏、立秋、立冬を迎える前の約十八日間を「土用」として、季節と季節の変わり行く期間とみている。陰陽五行説では、万物は木・火・土・金・水からなり、それらを季節にも当てはめてそれぞれ春(木)、夏(火)、秋(金)、冬(水)としたが、四季で残ってしまう土を季節の移り変わりのための期間として設けたとされている。「土」は変化させる作用、「用」は働きの意味を持ち、季節の万物は土用によって変化し次の季節がやってくると解釈されている。(※参考:こよみ屋さん) 日本では、今では夏の土用だけが鰻の時期として認識されているが、土用はそれぞれの四季にある。また同様に節分も、今では立春の前日の豆まきの日としてのみ認識されているが、本来は季節を分ける日として、立春、立夏、立秋、立冬の前日を節分と呼ぶこともあまり知られていない。
 旧暦では、この土用や節分で前の季節が終わり、立春や立夏を過ぎて次の季節に移るというわけなのだが、常々小生はこの発想に幾分かの違和感を覚えてきた。立春、立夏、立秋、立冬は、それぞれの気候(立春:2月4日頃、立夏:5月6日頃、立秋:8月8日頃、立冬:11月8日頃)を見ればわかるようにそれぞれの気候、つまり暑さ寒さ、春秋のピークを迎える頃である。立春でいえば、今まさに寒さのピークを迎える頃に冬が終わり、春になりましたと言われてもどうしても実感を伴わない。そのせいか、陰陽五行を含むいわゆる旧暦の類は時代遅れのような印象を与え、現代にはそぐわない感傷的な遺物のように扱われているような気がしてしまう。小生の季節感はこうだ。季節は常に2種類の季節の「気」が混合して存在している。冬の前半は、秋と冬の混合、冬の後半は、冬と春の混合のように。立春とは、冬から春に「変わる」日ではなく、冬の前半から後半に移り替わる日である。11月8日頃の立冬から産まれた冬が、だんだんと秋の気に対して割合を強め、12月23日頃の冬至に冬の気が秋の気を上回る(まさに冬に至る)。それ以降、秋は割合を減らし、冬はその気を100%へ近づけてゆく。そして2月4日に迎える立春とは、冬土用(1月18日〜2月3日)の間に秋の気が静かに消え、文字通り、春の気が立つその日である。今まさに冬は盛り、小さな小さな春が、生まれようとしている、そういう季節なのだ。そうであればこの冬の土用とは、8月の立秋に産声を上げた秋の気がようやく巡りを終えて、土の下に沈み行く期間なのだと思える。土の下から季節の気が立ち、そして土に返るそのイメージは、小生にはとても温かみを覚えさせてくれるのだ。夏から冬へと寒暖の変化をゆっくりと繋いでくれた秋が、その役目を終えてようやく今、春の産声を前に眠りに着こうとしているのではないだろうかと。

 農事暦などでは、四季の土用の頃は土を動かさず、といわれることがある。土木作業や開墾作業など、土を動かすような仕事を忌み、この時期は避けるようにと言われてきた。土木関係の業界では、今でもこの習慣を大事に残している会社もあると聞くことがある。こうした風潮は、おそらくは夏や冬の盛りのその時期に、体を酷使するような作業はなるべく避けようとする古来の知恵であったり、春と秋では新緑や紅葉の見ごろのその季節に、少し体を休めようとする慣わしなどに結び付けられたのではないだろうかと推察できる。しかしそれと同時に、四季の気がそれぞれに土に戻り土より出づるこの頃に、季節に敬意を持って静かに見守ろうとする穏やかな思いもあったのではないだろうかと想像するのだ。なんとなく、眠ろうとしている秋の気を、土を掘り起こすことで霧散させてしまったり、産まれようとする春の気を、数日前にほじくり出して叩き起こしてしまうような、そんな感じ。

 長々と書いて何が言いたいかといえば、このところ家に篭り気味になって田畑から遠ざかっているのは土用の期に沿って季節を愛でていたからであって、サボりではないのだという、自己暗示です。さて、春も己れも、いよいよ立つべし、ですな。 

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posted by 学 at 15:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 暦の調べ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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