第三十七候: 立秋 初候
【涼風至(りょうふういたる)】
=涼しい風が立ち始める=
(新暦8月7日頃〜8月11日頃)
【涼風至(りょうふういたる)】
=涼しい風が立ち始める=
(新暦8月7日頃〜8月11日頃)
※七十二候を“ときどき”取り入れています※
四日前の立秋を過ぎいよいよ夏は峠に差し掛かっている。溢れるような朝露、むせ返るような炎天、叩きつけるような夕立。いつもの8月、いつもの夏のキーワードがいよいよ並び始めた。(夕立は、希望を込めて文字におこしてます。)
今年の田んぼは、カラカラの湿地(というのも変な表現だが)のまま梅雨を過ぎ、水が慢性的に少ない状態で立秋を迎えた。それでも自然農、草に覆われる田んぼは力強く、決して土が乾いて割れるようなことはなく、細々と、しかし着実に根を張って分蘖も少しずつ進めている。今年は水が圧倒的に足りないために雑草の生える早さがいつもの倍ほどに思われるほどに厳しいのだが、まだまだこれから頑張ってくれる稲の成育を見守るために、雑草に負けぬスピードで適宜草刈りを行い、程よく雑草との共生を計っていく、・・・はずだった。
先日田んぼに草刈りに入ったとき、見ている景色に対して、かなり確かな違和感を覚えた。田植え後に何度か草刈りに入って手入れをしてきたエリアがやけに寂しい。草はたくさん生えている。しかしそれでも稲は頭ひとつ抜け出して背を伸ばしていたはずだった。なぜだか、植えたはずの列に、稲の鮮烈で瑞々しい葉を見つけることができない。少し目線をずらすとその特徴を保った稲の葉並みを確認できるのだが、ある範囲のエリアには、つい先ごろまであったはずのその稲の葉が、あきらかに消えてしまっている。いやな予感に加えて過去を思い出して、おそるおそる区画へ足を踏み入れた。そしてその稲を植えたはずの株元には、何者かにズタズタに切り刻まれた稲の葉っぱがこれ見よがしにまとまり落ちていた。まるで誰かが悪意を持って刑を執行したかのように、見事に稲の葉のみ、刈り倒されていた。


思えば昨年も、農園参加者のある方の区画で見られた犯行だった。小生の区画でも、時折、発生していた。しかしこれほど広範囲で発生したのはこれが初めてだと思う。
モグラ、ではない。そもそも水田にモグラが出るのがおかしな話だが、水が張らないこの時期の我々の田んぼでは、時折モグラが稲の株元を荒らすことがあるのだ。が、その際の被害は切り刻まれるのではなく、稲がそのまま立ち枯れていく。ではなにか。イナゴやコオロギのような昆虫、だろうか。しかし彼らは葉を食い荒らすことはするが、律儀に切り刻んでそのまま土に置いていくようなことはしないように思われる。彼らの本質は、葉を食べることにあるはずだから。では人間??だろうか。誰かにいつ恨まれてもおかしくないような小生の田んぼであるなら、どこかの誰かがこっそり時間をみつけて稲だけ切り刻んでいくこともあるかもしれない。しかしその際も田んぼに踏み入らなければ犯行は実行されるはずはなく、草刈りが追いつかずに雑草が復活しだしたエリアなどは、誰か人間が足を踏み入れたらその足元の草は一日二日では戻らず、踏まれ倒れた後が必ず残っているはずである。つまり、前日までは稲が育っていたエリアで犯行が行われていた時に、それが人間の手によるものならば、草を踏み倒さずに稲のみを切ることは不可能なのだ。それでは、何者の仕業なのか。
よくよく現場付近を観察すると、その犯人の足取りを示唆するなにかが見つかり始めた。それはごくごく日常的に田んぼに見られる、ザリガニの巣穴(生活穴?)である。過去、ザリガニ自体が稲を食べるとは思っていなかったのだが、しかし彼ら以外にその鋭利な刃物で稲を切り刻んだような残虐行為を実行できうる生物を確認することはできない。調べればすぐにわかることだったのだが、ザリガニの前足、もといハサミは、稲の株元(根元)を切り刻み、田んぼの害獣として悪名をとどろかせている。これまで、これほどの被害には至らなかったために見て見ぬふりをしてきた。というよりも、対策のしようがなかった。被害が少ないうちは「仕方がない」でやつらを許してこれた。そして今、ここに至ってしまった。今年の、水が絶対的に少なく、田んぼが泥ではなく土になってしまった状況のせいなのか。それとも単にザリガニが活発化してしまったのか。
いずれにせよ今できる対策は限られている。他の区画でザリガニの被害があまり見られないところを見てみると、よく草を刈っている。おそらくザリガニ巣穴の外では草むらの中を好み、草刈りして視界が広がっているような場所はあまり入り込みたがらないのだろう。であるなら、まずは定期的な草刈りをもう少し頻度を上げていってみようと思う。それが大前提。あとはザリガニ釣りしてロブスターなみに食べて退治しようか、などなど。もしくは長期的には、田んぼの隣に井戸を掘り、湿地田んぼに強制的に水を引き入れるという作戦も考えられようか。水を張ってもザリガニは生息するが、少なくとも今年よりも昨年よりも稲切りのような被害はあまり見られなかったのだから。そして近代灌漑水路が配置されていないこの湿田では、水路から水を引き込むというのができない。その上で水源を求めるとしたら、地下にしかないのである。そうして水を張った田んぼでいったいザリガニ被害を食い止めることが出来るかどうかはさておき、水稲はよく育ち、もしザリガニが減るとしたら、こんなうれしいことはないのである。来年に向けて、井戸掘りか…。それも楽しめてできるようになるのもいいだろう。予算も、工程も、許認可もふくめてイチから調べてみましょうかね。やれやれ。また楽しみがふえたわい。

右は無事の列。左がばっさりやられた列。わかりにくいけど無残。
集合日でプレーヤーさんたちと話していたら、タガメも怪しくないか?とのご意見もいただいた。水はなくともタガメも徘徊はするらしい。はてさて真犯人はいかに。そして今後の対策はいかに。まずは受け入れて、そしてこの世を面白く。