注)記事の日付は太陰暦を用いております

2013年09月09日

一憂一喜

葉月三日 雨一時曇り

第四十三候: 白露 初候
【草露白(くさのつゆしろし)】
=草に降りた露が白く光る=
 (新暦9月7日頃〜9月11日頃)
七十二候を“ときどき”取り入れています※


 
 今年に入って一番かもと思わせるようなじっくりと濡れた一日。

 この夏は、稲の生育にハラハラさせられている。とにかく、雨が少なかった。水が少ないせいか、(恐らく)ザリガニの餌が減り、稲を切って食べてしまうエリアが続出し、田んぼに向かうたびに足取りが重かった。

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 今日もまた不安を抱えて、草刈りに田んぼに入った。心と体は、半分以上あきらめかけていても稲株を探している。傍目から見てほとんど雑草しか生えていない田んぼにしゃがみ、草の列に鎌を入れていく。すると、ほのかに、しかししっかり分蘖した稲が、わずかに、確かに、残っていて、稲穂の花を咲かせてくれていた。

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 一方で、また今朝にでもヤラレタのではないかと思しき切られたての被害(ザリガニ?)も見られる。それを見て感情は、「チクショウまたやられた!」と不快へ傾く。しばらく後に、残された稲株を発見してしげしげ眺めていると、心が、「あああ、全滅はしてくれてなかったなあ、よかった!」とほのかな安堵をつれてくる。まず遠目で区画を眺めて一度、そして改めて草刈りを始めて二度、「全滅」や「絶望」という単語を容易に思い浮かべてしまう自分。その気持ちに負けそうになりかけたそのときに一株一株の生き残りの稲に出会うたびに、「全滅なんてとんでもないじゃないか。ここに一株でもいるじゃないか。」と大げさじゃなく思う自分がいる。どんなに過酷な状況になったとしても、最悪でも、来年の種になればいい。それだけでも残ってくれたのなら、また来年に命を繋げることができる。ならいいや、と心がシフトしていったとたん、稲の残り具合が「全滅」ではなく、「来年への架け橋」に見えてくる。それだけでなんと気持ちが和らぐことか。それだけでなんと世界の密度が変わることか。


 今年の畑では、昨年までの育たなかった野菜が実りに到達するように変わってきた。雨不足や猛暑の気象条件も加味したとしても、この夏の畑の作物作りは難儀した。蒔いても育たず、世話しても枯れ、里芋も生姜もだめなものは全くだめで正直、「今年もなかなか改善してくれないなあ」と思いかけていた。大げさに言えば、「本当に自然農の土は年を追うごとに良くなってくれるのだろうか?」と、酷いときには猜疑心すらいだいていた。「駄目」かもしれない、そんな単語が頭をめぐっていたこともあった。しかしそれも、そうではなかった。すべてが望みどおり育つような畑にはまだなっていない。けれども変化は着実に進んでおり、そのかすかなサインを、畑のキュウリが灯してくれた。昨年まで、キュウリは発芽はしてもその後の生育が止まってしまい、実をならせずに黄色く枯れてしまう症状が多く見られた。その畝とほとんど同じ畝なのだが、今年は着実に、大きなキュウリを実らせている。それはやはり、「駄目」ではなく、「望み」である。

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 「キュウリは育ったけど、他は全然育たなかった」 と、
 「キュウリが育ってくれたということは、土は良くなっている」 は、入口と出口が全く違う。

 「あんなに苗を植えたのに、ほとんど全滅だ」 と、
 「多くが被害を受けたけど、来年の種分だけでも残されている」 にしてもそうだ。

 「否定的」かつ「断定的」な言葉をそう簡単に使わずに、常に未来の萌芽を見つける。現実逃避でもなく、反省なしでもなく、この「見つける」気持ちの向け方。分析や判断や学習は常にされるべきであるが、そこにさらに現状と未来と自分をつなぐ萌芽を見つけ出していく、それが自然が本来そなえている力強さなのではないかと思う。現状に問題点を見出して、それをことさらに改善、解決していこうとする生き方は、人生にやることが多すぎる。自然農の醍醐味は、それをある程度自然の力に委ねることで(もちろん人間側の働きかけは常に求められるのだが)、自分の手から「改善」や「解決」を一部放棄できることにある。決して、不平不満を言いながらの怠惰ではなく、未来志向しながらの怠惰。「働かないと生きてゆけない」のではなく、「そこそこ働いて、より楽しく生きていこう」をしたいだけなんです。

 一喜一憂から、一憂一喜へ。


 と、まとまらないまま相当甘いことをぬかしてみました。

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posted by 学 at 06:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本人として | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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