
いわゆる自然農が、Natural Farming という英語で的を得ているかは実際のところわからないのだが、ふとした縁で交流した外国の友人と、Organic Farming とは違う意味であるのだと、お互いにしっかりと認識し、肩を組み、握手をしてお別れした。
そんな先日の出来事。
1月12日に開催した「つくいち」で、雑草屋の手書き看板を指差しながら、"Are you natural farmer ?"と笑顔で尋ねられた。聞くと、息子さんが筑波大学の大学院に留学されていて、つくばに遊びに来たという韓国の方だった。Yさんは、ソウル出身の47歳。現在家族もソウルに住んでいながら、昨年単身で韓国南部の都市(地名を失念)へ移住し、Natural Farming を兼業として始められたという。そんな話をしばし、つくいち会場で歓談しつつ、続きは畑でする約束をしての翌日の13日。
Yさんは、息子さんの手助けを経て手に入れた雑草屋の住所を頼りに、息子さんのアパートからiphoneを片手に45分を歩いて我が家に現れた。我が家からは自転車2台にまたがって畑まで案内し、枯れ草と、わずかばかりに残る冬菜や麦の芽を見て歩き、田んぼを回り、韓国の気候、育て方、収量、四方山に話をした。お互い第一言語ではない英語でのコミュニケーションはスムーズとは言えなかったが、お互いのベースに「不耕起(no-till farming ,non-cultivation)」「無農薬(pesticide-free; non-chemical)」「無肥料(non-fertilizer)」という共有が成立していたため、普段は長たらしい説明が必要なところを、不思議なほどに阿吽で会話していた。
途中、Yさんから、(恐らく)「なぜあなたは自然農をやっているのか。生計はたつのか。」という質問を受けた。いろいろと日本語で頭を巡らせながらも、結局は「持続可能な環境を考えたら、これに取り組むしかないと思った」と答えていた。はたして、「やっぱりそうか。」と、笑顔で握手が返ってきた。
Yさん曰く、Natural farming は韓国でもほとんど知られていないのだという。有機農、Organic は今では誰もが耳にして、日本と同じような状況だそうだが、Natural farming はほとんど誰も知らないのだと。Yさんは、「だけどこれしか道はないじゃないですか。」と熱く話してくれた。だからYさんは、従来の仕事を半分やめてでも、ソウルから単身農村へ移住して、農ある暮らしを始めたのだ、と。
「(モグラや鳥など)害獣は害獣ではなく自然のメッセージなのだ」「麦と大豆とジャガイモの輪作がいい」など、Yさんの哲学や試みをたっぷりと伺い、いつの日か韓国のYさんの畑の見学を約束し、名残を惜しみつつ畑を後にした。家路の折、息子さんのアパートまで車で送りますよと告げると、またにこやかにiphoneを取り出した。「ありがとう。だけど僕は歩いて旅するのが大好きなんですよ。歩いて見える景色を楽しむのが、旅の醍醐味じゃないですか。」と次なる目的地の筑波山へ向かう、ローカルバスの停留所まで、スマートフォンのmapを頼りに野良道を歩いて向かうのだと言う。
別れ際に私から、お子さんも農業は好きなんですか?とたずねた。Yさんは、息子はゲームにばかり熱中して農業のことなどかけらも興味がないようだ、と笑っていた。

遠くて近いおとなりさんの国で、自然農(あるいは自然農法)から生まれる縁。隣の畑の爺さまよりも、韓国からの新しい友がずっとずっと近しいおとなりさんに感じた一日だった。
第七十一候: 大寒 次候
【水沢腹堅(さわみずこおりつめる)】
=沢に氷が厚く張りつめる=
(新暦1月25日頃〜1月29日頃)
【水沢腹堅(さわみずこおりつめる)】
=沢に氷が厚く張りつめる=
(新暦1月25日頃〜1月29日頃)
※七十二候を“ときどき”取り入れています※