注)記事の日付は太陰暦を用いております

2014年07月10日

攻防

水無月十四日 曇り

 ぬるりとした暖かい風が届く台風前夜。濡れては日が差す最良の気候が続く今年の畑では、枝豆(及び大豆)の種まきが最終コーナーを回る頃を迎えている。既に播種して一ヶ月を迎えたものは、本葉の先にぐいぐいと茎と葉を伸ばしはじめた。早朝から午前は田植え、午後から夕方は大豆の豆まき、その他の作業は合間合間、(隙を縫ってのワールドカップ、)という毎日が続いている。

 わが農園での大豆栽培での風物詩と言えば、種まき後の発芽した双葉の芽を啄ばむ雉対策の防護ネット。個人的には鳥とは思えないほど、ほぼ足で移動する雉は、どこかしらの草むらの中に巣をつくり、ひねもす田畑や草むらを散策しては餌を啄ばみ生息している。雉が羽を使って羽ばたくときは、唯一、逃げるとき(しかも十数メートルほど)なのだ。この雉が、いやはや見事なまでに、大豆の芽を食べる。そのため、大豆畑の周囲に地面から高さ50cmほどにネット(あるいは麻布)を張り、横からの侵入を防ぐという防護策を講じてきた。飛ばない雉から大豆を防ぐには、空からの侵入を考慮する必要はなかったのだ。

 20140602daizu-net.jpg

 今回、例年以上に作付け範囲を増やして大豆を栽培するにあたり、この防護ネット策は実に的中してきた。ネットを甘めに張った箇所、もしくは後手に回った箇所は発芽するや否や、ひねもす散策しているらしい雉の家族に目ざとく発見され、およそ50%にも昇る被害率で啄ばまれてしまったのに比べ、適切に対応できた箇所は、ほとんど無被害にすることができたのだ。

 そんな折、順調に防護ネットで作付けを進めていた区画で、種まき直後に、植え箇所が何者かに食い散らされる現象が発生した。発芽した後に芽を啄ばむ雉とは違い、明らかに、播いた「豆」そのものを食べに来ている。ネットは問題ない。・・・とすれば、あいつだ。黒く、狡賢く、雉とは違って翼を器用に使いこなす、カラス様。

 異変に気がついたのは数日前。しっかりとネットを張った区画に、どうも、鳥らしい啄ばみ後があり、大豆の播いた箇所が荒らされている。発芽もまだしていないエリアに、丁寧に30cmおきに種を落とした間隔ごとに、播種後に乾燥防止の為に土に被せた刈り草をわざわざ取り除いて、土をほじくって、どうやら豆を食べている。これは雉が入り始めたのか、いやいやひょっとしたらカラスにでもやられたかと、念には念を入れて、鳥避けの反射テープ(天然資材ではないが、妥協して使用している)を、周囲と区画の上空に張り巡らせることにし、被害のあった播き箇所に再度種まきした。

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 その数日後、、、再び被害は繰り返されていた。鳥避けの反射テープ(キラキラテープと呼んでいる)など意も介さず、見事にまた、被せた青草を脇に寄せ、しっかりと大豆の種を啄ばんでいったあとが、畑のあちこちに残されていた。

 
 昨年までの自分であれば、ここで諦めていたかもしれない。しかし、今年の大豆の作付け増量計画を頓挫させるわけにはいかない。そして何よりも、人間様が、カラス様に負けるわけにはいかない。この知恵比べ、果たして何が妙策となるのか、三度の播き直しをしながら、思案を重ね、奇策を思いついた。
 
 カラスは、知恵者であるのに間違いない。戦いは、相手の実力をリスペクトするところから始まる。奴らは賢い。恐らく、キラキラテープの張られた区画を遠目で観察した彼らは、「あのキラキラは気に障るが、あのエリアにはきっと人間どもが食べられたくないような旨い何かがある」と既に知っているはずだと、これまでの(今年だけに限らない)戦いでわかっている。さらに彼らは、「この畑で青草が点々と敷かれてある箇所の下には、何か旨いものが播種されている」と、ここまでわかっているに違いないはずだった。あまりにもピンポイントで狙われており、そのほとんど全てが、(これまでの自然農の作業の手本にしたがって)種まき後に保湿に青草を被せていた箇所なのだ。彼らはその青草を器用に口ばしで避け、土を引っ掻き回し、出てきた種を食べている。

 であるなら、彼らの脳の中にある等式は恐らくこうである。キラキラテープの張ってあるところ=美味しい何かが植えてある。さらに、青草が敷いてある箇所=その土の中にはご馳走がある。

 そこで、一計を案じてみた。大豆を播きなおした箇所には、乱雑に枯れ草を散らして畝の他の箇所と見分けがつかないようにし、大豆を植えた合間合間のなにも播いてない箇所に、従来播きどころに草をかけていたのと同様に青草を敷いてみたのである。まさか、の子供だましのような、それでも大の大人の必死の知恵。

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 <左の雑に枯れ草を散らした箇所に種まきし、右の青草を刈って敷いた下には何もない。>


 こうしてその数日後。遠めに見た畑に、土がほじくられたような箇所があるのがわかった。変な興奮と、万が一の嫌なイメージと共に、思わず駆け寄った。


 そこには、カラスへのカモフラージュで青草を敷いた場所の草が避けられ、土が乱され、明らかに、誰かが何かを探したような光景が広がっていた。そしてその青草箇所の隣の、実際に種を播き、さらに枯れ草を乱雑に散らしておいた箇所は、軒並み無事だったのだ。キラキラテープ+青い草=美味しい大豆、という勝利の方程式を、人間様が打ち破った瞬間だった。朝の畑で、長女と共に見つけたこの光景に、大声でヨッシャーと荒げてしまっていた。「カラスに勝ったー」と、鳥との知恵比べを自慢する父親っていったいどうなんだ、と疑問に思いながら。


20140709winning.jpg


 そんなわけで、日々、戦っておるのです。

 ザマアミローーーー!!!

 
第三十一候: 小暑 初候
【温風至(おんぷういたる)】
=あたたかい風が吹いてくる=
 (新暦7月7日頃〜7月11日頃)
七十二候を“ときどき”取り入れています※

posted by 学 at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 畑の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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