注)記事の日付は太陰暦を用いております

2005年06月07日

ヤギも食わない

皐月一日 晴れのち曇り

 自然農的なもののひとつに、「鉱物資源をなるべく使わずに」という視点がある。

 トラクターを使えば十人分を一人で作業できるのだからそのほうが効率的だという考え方に対して、その鉄を掘り出すのに幾人がいて、トラクターを作るのに幾人がいて、石油を掘り出すのに幾人いて、販売するのに幾人がいて、と考えだせばどちらが効率的かとは一概に言えないのではないかという視点である。もちろん、既に石油や鉱物資源が産み出す便利さに我々は依存しきっており、そのような視点がカウンターパンチになり得るとは言い難いのが現状である。

 数年前、ヤギの世話をしていた頃の話をしよう。ある日牧場に遊びにきていた子供たちが、持参したノートや広告などを破ってヤギたちの目の前にさし出していた。しろやぎさんから♪の歌にあるように、やぎが紙を食べるということを証明したかったのだろう、実に純粋な子供の好奇心が小気味よかった。自分でも試したことがなかったその「大実験」に小生も興味しんしんで覗いていたが、結果はさにあらず。ヤギくん達は紙を口に含むものの食べはせず、結局一枚も胃の中に入ることはなかった。ちょっと残念な、子供の夢をこわしかねないものとなってしまった。そのとき思ったことは、毎日毎日の飼料(牧草)と、放し飼いでの雑草という天然の美味を食い漁っているやぎたちの味覚の正しさであり、もうひとつは、くろやぎさん♪が食べた紙と今の紙質に大きな差があるのではないかということだ。
 化学工業が発達するまでの千年超の間、紙の原料とは古今東西、単純に繊維質の豊富な草木類であった。和紙の原料である「楮(こうぞ)」や「三椏(みつまた)」の名前を出すまでもなく、紙といえばそうした繊維質に着目された植物から作られていたのである。無添加の天然素材100%の紙であれば、やぎじゃなくても「うめえうめえ」と食いたくなるのもわかる気がする。
 では今の紙はどうなのだろう?原料が植物であるのに違いはないが、化学工業の発達により種類を問わず広範囲の樹種からの製造が可能となった。そして、可能たらしめるその製造工程には多くの化学薬品が投入されることになる。原料を煮込んで繊維質を取り出す際のアルカリ溶液、白色度をあげるための塩素漂白、加工下準備の際の充填剤、吸着剤、定着剤など、普通のコピー用紙でさえもこの程度の薬品使用は通常のようである。さらには印刷紙であれば工業インクが加わるのだ。この事実を鑑みればヤギくん達が紙を無視してまるで食指を伸ばさなかった「実験結果」にも頷かざるを得ない。つまりは、薬漬けの紙などは食べたくもなかったということであろう。(アジノモトを添加したら食べだしたりして!?)

 とはいえ、紙は食うものにあらず、と言われればそれまで。やぎの為に、食べられる紙の頃を懐かしむ義理などまるでないのだから。むしろ大切な文書がやぎに食われては困るわけだしね。さてさて。

 小生が惹かれている「自然農」から貰える視点とは、あくまでも、鉱物資源に頼らない農業や生活は可能であろうか、それはどのような生活だろうか、というものであるに過ぎない。それは、静かな静かなメッセージである。ふと、大家さんから聞いた話を思い出した。ここ江南町では数十年前までは里山から楮や三椏を刈り取り、近くの紙業の盛んな村(現小川町)まで運ぶのがいい小遣い稼ぎになっていたそうだ。大家さんの子供の頃の話だそうである。

 現代のやぎに、美味しい和紙を食べさせたくなってしまった、そんな夜。



アワガミファクトリー
  …「阿波手漉和紙商工業協同組合」による和紙情報サイト。
   徳島県の阿波和紙についてのみならず、和紙の総合的な
   情報が手に入る。デザインもシンプルで好感。

紙への道
  …製紙業界の第一線で働かれていた中嶋氏のHP。
   紙に対する熱い思いが伝わってくる。現場観にあふれる
   製紙工程の解説は細部に至り、当記事の内容部分はここ
   から大いに示唆をいただいた。

≪おまけ≫
あいち科学技術の館
  …本文で引用したフラッシュ版での製紙工程はここから。
   「体験しよう!−どうやってできるの?」のページでは
   実に60種に及ぶ「ものづくり」の中身を知ることがで
   きる。飛行機からえびせんべいまで、秀逸の内容です。
   やるなあ、愛知県! 


posted by 学 at 20:17| Comment(5) | TrackBack(0) | 自然農のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
タイトルに即反応。
当方、先月、紙をむさぼり食うヤギと遭遇。
モノは、長期野外に放置された段ボール。
そもそも漂白とかされていないように思えるが、さらに
沖縄の太陽、風、雨にさらされ「素」になったのだろうか。
現場で撮影したシャシンをHPの掲示板にアップしてみたので
みてみてくださいな。
Posted by イッキ at 2005年06月08日 15:08
やぎねえ。たまらんねえ。
多分そのダンボールには好物のムラサキイモが
入ってたに違いねえ。うん、間違いねえ。
Posted by 学 at 2005年06月10日 00:49
シャロムにもヤギがいるんですー。
白と黒の模様がかわいいやつです。
こないだ遊び心でスーパーのレシート見せたら食べました。(ヤギ、ごめん・・薬漬けなのに)

鉱物といえば、化学肥料も素を探ると鉱物だったり、石油だったりしますよね。(リン酸や尿素なんかね)こないだじっくり調べてみて複雑な段階をふんで化学肥料として市販されるに至るのに驚きました。
Posted by yoyo at 2005年06月19日 16:09
健康を損なう恐れがあるのでヤギに紙をあたえてはいけません。子供がやろうとしていたら注意すべきでしょう。
Posted by at 2007年07月04日 11:53
子供が戯れに紙を与えても、やぎ君にも問題がないような世の中になるといいですよねえ。

ヤギよ、お前もお手紙読まずに食べれる世の中が恋しかろう(笑)。
Posted by インチキ at 2007年07月12日 23:37
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