注)記事の日付は太陰暦を用いております

2016年10月12日

正解を求めない

長月十二日 晴れ

 今の畑に自然農の手入れを始めてもうすぐ10年が経つ。ようやくサツマイモが、唐辛子が、ナスが、ピーマンが、実感をもって育ってくれるようになってきた。トマトも、キュウリも、オクラも、種を蒔いて、育てて食べるという喜びが、自然農の作業の中についてきてくれるようになった。

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 耕さず、虫や草を敵とせず、農薬肥料を必要としないで、人の力と自然の営みの中で育まれる農のあり方。自然農に、明確な定義はない。もしくはそうした農のあり方に、「自然農」という決まった言葉がなくても良い。千差万別、十人十色の自然感、エコロジー感と、持続可能性を前提とした大自然の采配が合い混ざって、一人一人の「自然農」的な栽培方法、農スタイルが存在してくる。
 古武術的な身体の使い方には「正解」という画一的な方法があるのではなく、個性に応じた「最適解」を探求する姿勢こそが求められる。自然と共生する農のあり方も、これと同様に「正解」はない。

  
 畑に実りが訪れてくれるようになって、それまでの積み重ねを振り返り、いったいどうして育ってくれるようになったのかを考えることがある。もしそれがわかるなら、その手法を確立したい、みんなに伝えたい、教えたい、のような気持ちがむくむくと沸き上がる。そして気がつくと、妻に、友人に、ああだこうだと、「今」の推論をわかったつもりで話してしまっている。
 しかし自分は実は何もわかっていない。川口由一さんが、福岡正信さんが、木村秋則さんが、ビル・モリソンさんが、そしてもちろん多くの余人が積み重ねてこられた、自然と共生可能な農のあり方のそれぞれの「最適解」をヒントに、それを現在進行形で探求しながら楽しんでいるだけでしかない。誤解を恐れず言えば、「わかりたい」とは思っていない。今の畑に立ち、季節を感じ、種を降ろし、草を刈り、育つと育たないの合間に過ごす。自分の個性として続けてきた、今日までの自然農的な応じ方の結果として、作物が育ってくれるようになってきたのは嬉しい。やっぱりね、嬉しいよ。「肥料入れなきゃ育つわけない」「耕さなくて育てるなんてありえない」「育たないのになんで続けるの」なんて声が気にならなかったと言えば嘘になるから。だからこそ、育つぞこのやろう、肥料も農薬も耕運機もなくて育てられるぞこんちくしょう、とも思っている(笑)。
 とはいえその一方で、肩を落としたくなるくらいに壊滅的に下手くそな、ニンジン、タマネギ、白菜、キャベツ。まだまだ、悲しいくらいに手応えが反ってこない。

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 自然農的な栽培を実践する方々の声に耳を傾けると、本当に多くの知恵と気づきが溢れている。そこには、真に迫ってくる「正解」のような技術、手法が存在する。そしてそれは今の世の中、簡単にWebを通じて目にすることができるし、実際に訪問して覗くこともできる。それらに触れると、ワクワクし、興奮し、想像力と好奇心が沸き上がってくる。試してみたい、なるほどそういうことか、自然の懐は深いなあ、皆さん視野が広いなあ、と心が動き、自分なりに咀嚼した上でおいしいとこ取りしていく。

 そういう意味では、苦手としている上記の野菜たちにも、すぐに結果があらわれるような正解が存在するかもしれない。しかしそれはきっと自分自身の最適解とは、少しだけ離れて存在する。そしてその最適解は、きっと「わかる」ではなく、「訪れる」という姿であらわれる。今年の畑に訪れてくれた、ナスやピーマンや、唐辛子たちのように。まずは肌感覚として、それに加えて若干の、自分なりの系統的な理解もブレンドされて。
 もちろん、この最適解はいまこの瞬間のものであり、畑が変遷していくなかで自分と共に常に進行していく。だからそれは変わりもするだろうし、あまり変わらないかもしれないし、どっちでもいい。重要なのはただ、嬉しい畑、心地よい畑に立てる自分でいられるように向き合うこと。今までもそうしてきたように。これからも。

 自然農での上手な育て方を知りたい、わかりたいという思いはそっと横に置いて、「こうかも、ああかも、良い感じ、つかめた気がする」的なアプローチ。こうした試行錯誤の積み重ねを、大自然の摂理の足元で甘えながら続けていきたい。うまく育ってくれた時も、うまくいかなかった時もまるごと含めて。その道のりこそが、自分にしか楽しめない自然農だから。

 これが自分なりの自然農の「最適解」であったからこそ、地位も名誉も収入もない中で、笑って生きていけるんだと思っている。

 さあ、エンドウ、空豆、カブに麦、秋後半の種まきが、また始まる。


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posted by 学 at 12:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 本質を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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