注)記事の日付は太陰暦を用いております

2007年11月29日

おいしさ

神無月二十日 曇り


 自然農の野菜はおいしいか否か?

 その答えは、否である。

 
 あえて、あえてそう言ってみる。


 先日のカフェイベントで行われたカブの「テイスティング」。まどろみカフェさんから成績報告を聞くと、正解者は30人中6人ということだった。

071125kabu.jpg

 慣行農、有機農、自然農、この3種を本来の味の違いが際立つように極めてシンプルに調理(おひたし)して、どのカブがどの栽培方法かを当ててもらおうという企画である。実に面白く、実に冷や汗のでる企画。カブと一緒に配膳された回答用紙には、主催者の優しい配慮から、簡単なヒントが記載されている。

 曰く、

 慣行農(化学肥料)・・・「おいしくありません。」
 有機農(有機肥料)・・・「美味しい。(有機肥料の味)」
 自然農(無肥料) ・・・「美味しい。」

 実物には更に加えて、その栽培法の特徴や一般的に言われている味の特徴も書かれており、被験者は自分の頼りない舌だけでなくこのヒントも手がかりに答えを探していく、というワケだ。そうして出た答えを分析してみると、実に面白い結果が導かれてくる。その低い正解率はあらたまってとくに問題ではない。普段食べ比べなど縁のない我々にとって、その違いに敏感ではないのはごく自然なことだと思う。注目すべきは、不正解の人が「自然農のカブ」をいったいどの栽培法と思ったのか、である。
 結論を先に言えば、実に自然農カブのテイスティングを間違えた人のほとんどが、このカブは慣行農のカブである、とチェックをつけていたのだ。「おいしくない」とヒントに記載された、慣行農である。そしてそれと比例するように、慣行農カブの項には、「美味しい」と記載された自然農のほうにチェックがつけられていた。どの程度の人数が、ヒントを参考にして選んだかまではわからない。しかし多くの(自然農の野菜をほぼ初めて口にした)人が、自然農のカブを「おいしくない」ほうにチェックしたのだ。

 ここで思考は、「でははたして自然農のカブはおいしくないのか?」という問いにぶつかることになる。そして「慣行農の野菜はおいしいのか?」という問いにも、である。そしてテイスティングテストの結果は、自然農のカブはおいしくなく、慣行農のカブはおいしい、と言っているかのように見えるのだ。しかし我々はここでまた、一つの問いにぶつかることにもなる。「おいしいとは、なんぞや?」と。
 その問いに答える一つの手がかりがある。それは「慣れ」だ。人間の嗜好性を俯瞰してみると、「おいしさ」と非常に紛らわしい味覚に、「慣れ」という味覚があることを考えたい。おふくろの味や故郷の味を例に出すまでもなく、この「慣れ」と「おいしさ」の関係には深く分かちがたい絆が存在していることは想像に難くない。そのとき、食べ慣れない自然農カブと食べ慣れている慣行農カブ(日本の市場に流通する99%以上の野菜が慣行農で育てられていると言われる)との「味」の違いは、なにげないヒントに手招きされるように、「おいしさ」の違いとして認識されることになったのではないだろうか。

 そこには、「食べ慣れた味」と「食べ慣れない味」があるという事実と、栽培方法によって確かに味に違いが出るという事実、そしてそれを「おいしい」と思うか「おいしくない」と思うかはその人次第なのであるという事実しか、残らないのではなかろうか。慣行農は変な甘みがあるとか不自然な味がするとか、有機農は肥料臭いとか旨みにコクがあるとか、自然農は野菜本来の味がするとかすっきりしているとか、それはただの言葉であり、ホントウのこととは程遠いコマーシャリズムのような気もするのである。

 という、仮説と、希望と、屁理屈を俎上に上げたまま、自分はまた野菜作りに戻るしかないのである。そしてその先に、自然農の野菜を食べたいと思う人が増えてくれることを狙うのが、今の野望なのだから。

 なぜこんなに強気なのかといえば、もちろん、小生は全問正解になんとか辿り着いたからなのです。食べ慣れててウマイなあと思ったのは、自然農の野菜だったのです。この点、最後に報告して終わりにしたいと思います。

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 自然農の野菜はおいしいか否か?

 その答えは、あなたが選んでください。
posted by 学 at 10:24| Comment(9) | TrackBack(0) | 本質を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
んん。むずかしいな、こういうハナシは。
まだ、自然農があこがれの彼方で語られている今は、「自然=いい=うまい」のステレオタイプでコトが足りてるけどね、実際のところ、こういった問題の根は、深い。そらあね、ひとによったら、確かにうまくないんだな、ホントに。それは、わたしも、知っている。まあ、わたしにとっては、基本的に、うまいけどもね。
じゃあね、たとえばね、永田農法とくらべたら、どうか。うまいか。あれは、100%化学肥料だけどね。まあ、一般的には勝てないね。勝てない。たぶんたいがいの人が、自然農よりも永田農法を選ぶでしょう。
しかし、それがもし、「自然農」でなくて、「川口さんの畑の野菜」だったら?わたしは、一も二もなく、永田農法の野菜ではなく、川口さんの畑の野菜をえらぶ。まあ、ある程度の感覚がないと、そういう結論にはならないかもしれないけど、それくらい、あの野菜はすごいと思いましたね、わたしには。うまい、まずいでなくて、『いのちが香る』としか、表現できないけどね。
それでね、永田農法、別名、緑健農法だけどね、10年前、私は緑健農法の農家訪問ツアーに行ってるんですが、そのとき驚いたのはね、『農家によって味が違う』。同じ作りかたの緑健トマトが、です。
そう、ナニが言いたいか、分かるね?耳の痛いハナシをするよ。なぜ、オムロンも、ユニクロも、永田農法の事業化に失敗したか。両方とも、数百億くらいは投資したはずだ。オムロンは、生産工場で自動化して作ろうとした。ユニクロは、中国に技術移管して作らせようとした。
・・・結果。まずい。。。
いのちは、ひとに、つく。「標準化された技術」につかない。
これが、いのちの、むずかしさ。
だからね、小松君も、もうすこし、こっちで勉強してほしかった、と、まあ、わたしなんか、思うんです。おせっかいな、オバサンのセリフでは、あるけれどもね。

Posted by ほほほね at 2007年11月29日 19:42
”おいしさの先”にあるものに
辿り着ける人たちが
自然農を実践することによって
増えてくるといいですね。

情報(ブーム、安全性、栄養、カロリー表記、賞味期限etc)によって自然農野菜を選択する人が
増えてしまうのは、本末転倒なような気がしています。
Posted by sato at 2007年11月29日 23:05
「おいしい」というのは、とどのつまり個々人の主観によってしか表すことのできない感覚なんですね〜。

でも、自然農の作物に直に触れる機会ができて、安心して「おいしい」と思える野菜たちに出会えたことは、食べ物以外の事物に対する主観も広げることができている気がするので、自己満足度は高いです。この感覚で味わうと、体も自然農野菜の栄養をたっぷり吸収でするようで、主観も馬鹿にできません。

こういう機会を他に伝えるきっかけをどんどん広げているまなぶくんやSato兄妹、素敵です。今度のイベントには是非参加させてください!

人の味覚や感覚まで、情報や知識に左右されるのはこわいです。地に足をつけて、自分なりの感覚を磨けるような生活をしていきたいです。
Posted by S at 2007年11月30日 15:44
学生時代、外国をバックパック旅行してた時、たまに現地のマクドに入るとホッとしたことを思い出します。
そこには「美味しい」と感じる一つの要素があると思います。

自然農はシンプルであるが故に奥がめちゃめちゃ深い…。

あらためて思うに、美味しさってなんだろうと考えながら生活できるのは贅沢というか幸せだなと。
カロリー足りてない人々はカロリーがあること、それが美味しさになり、アミノ酸が足りていない人はアミノ酸が美味しさの基準になり、食べ物それ自体の物語が足りていない人は、物語が美味しさの基準になる。
……仮説ですが。

考えが自分の中でまとまらないこと、結論が簡単に出ないこと、それ自体が面白い。

ということで、赤米と黒米の味も楽しみです。
Posted by furutani at 2007年12月01日 22:59
人はどこで味を感じるのでしょうか?
舌でしょうか、頭でしょうか、心でしょうか、はたまた身体でしょうか?

ビールは喉越しですね(ははは)。
Posted by yama at 2007年12月02日 21:34
はじめまして。
とても興味深い結果ですね。
私も食べ比べしてみたいと思いました!

以前何かのTV番組で、
中国から料理名人を呼んで日本の人気店のラーメンを食べてもらったところ、
その人はどれも化学調味料の味が強いとおっしゃったのです。
ラーメン屋さんは化学調味料を添加しなければ、
人気店になれないのだそうです。
私達は知らず知らずのうちに味覚も汚染されているようですね。

今、マクロビを勉強しているのですが、
野菜は食べた時の味はもちろん、
食べた後の体に与える影響も美味しさのひとつと思うのです。
Posted by ゆりねえ at 2007年12月03日 15:01
みなさんコメントありがとうございます!

色々考えているうちに返事が大きくなってしまったので改めて記事にアップさせていただきました。

こちらからどうぞ。⇒http://104.seesaa.net/article/70841706.html
Posted by インチキ at 2007年12月04日 11:20
>S、ちゃん?
ご無沙汰してます、元気ですか?

人間には意識があるから
習慣をも意識的な選択の繰り返しによって
変えていくことも可能なんですよね。

そしてどんな選択であったとしても
自分で、自分の感覚を意識して
選択し続けるということが大事だということですかね。
地に足をつけて。

自然農をキーワードに
自分達も楽しめて、つなげてひろがる企画があれば
皆で一緒にやりたいですね。
Posted by sato at 2007年12月12日 11:37
今後も自ずから然らしむるような「ひろがり企画」を
無理のないペースでやれるといいですよね。

皆様今後ともよろしく。
Posted by インチキ at 2007年12月14日 08:30
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