いつのまにか春分が過ぎ、日に日に土の温度がぬくもりをみせ、三日に一日は雨が降る。播いた種が喜び勇んで眠りから覚め、全身を感度にして春の大攻勢を受け止めている。秋播きの麦や空豆、豌豆たちは冬に張り巡らせた根を屋台骨に、いよいよの陽射しをエサにして一日ごとに背を延ばしている。
ジャガイモ、カブ、大根、小松菜、ほうれん草、レタス、山東菜、チンゲン菜、まだまだまだまだ播き足りない。人参、葱、ニラ、インゲン豆、キャベツ、キュウリ、ミョウガに菊芋、浮き足立つほどに種たちが出番を待っている。畝作りして、種播いて、芝の根っこをほじくり返して芋植えて、両手も両足も四本あっても足りそうにない。それがまた楽しい。
今日も明日も続きそうな春の陽気がふと翳り、午後に冷たい風を運んできたと思っていたら、遠く春雷が聞こえてきた。よし、雨が来る。自然農では播種後に水をやらない。その代わりに草をかけて乾燥を防いだり雑草を生やしておいたりして湿気を保つ。種を播いた後は、その土に自然に残る水気を頼りに発芽してもらう。そのため、種播きした後にやってくる雨雲は、まさに天の助けとなる。

雨は冷たく、そして一刻ほどで去っていった。湿り気を含んだ土は柔らかく種播きにはむかないが、芝畑の土を崩すにはもってこいの柔らかさ。晴れて、雲って、雨が降り、いよいよ春が盛りに入る。

